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令和3年度 廿日市市施政方針
令和3年度 廿日市市施政方針(令和3年2月16日)
はじめに
令和3年第1回廿日市市議会の開会に当たり、新年度の施政方針を申し述べ、市議会議員各位、並びに市民の皆様の御理解と御賛同を賜りたいと存じます。
一昨年の12月に中国・武漢市で最初に確認された新型コロナウイルス感染症は、世界中に猛威を振るい、未だ収束の見通しが立たない状況にあります。我が国においても、大都市圏を中心に再度の緊急事態宣言が発出されるなど予断を許さない状況の中、医療、介護・福祉従事者など、最前線で働く皆様に、心から敬意と感謝を申し上げます。また、市民一人一人が正しい知識を持ち、互いに支え合う気持ちを大切にし、誤った情報や不確かな情報に惑わされて人を傷つけることがないよう、しっかりと啓発、周知してまいります。
昨年は、新型コロナウイルス感染症への対応を最優先に、市民の暮らしを守り、地域経済を支えるための取組を進めてまいりました。市民の命と暮らしを守り、地域社会を維持することへの責任の重さを改めて胸に刻むとともに、この経験を糧として、これからの市政運営に生かしていきたいと考えています。
こうしたコロナ禍にあっても、喜ばしいニュースもありました。昨年9月、地域の魅力を動画で発信するプロモーション映像「はつかいち物語 愛の取調べ室」が、第9回観光映像大賞 観光庁長官賞を受賞しました。世界遺産「宮島」を身近に感じ、山から海まで多様性のある暮らしに「ちょうどいい」場所であることを市内外に広くPRし、本市に関心を持つきっかけになったものと受け止めております。また、民間機関が実施するシティブランド・ランキング調査「住みよい街2020」、「子育てしやすい自治体」で、一昨年に続き、本市は中国地方で一位となりました。こうした評価、成果は一端であり、私の耳には各方面からの廿日市市の頑張る姿に対する高い評価の声が届きます。このことは、日々の職員の努力はもとより、地域の皆さんと一体となったまちづくりに対する称賛と受け止めています。
総務省が公表した2019年の人口移動報告においても、広島県全体では転出超過となる中、本市は転入超過となりました。5年連続で転入超過となったことは、これまでのまちづくりに対する一定の成果として嬉しく思うとともに、この結果をエネルギーとして、今後も住みたい、住み続けたいまちとして選ばれるまちづくりに邁進してまいります。
昨年12月、全日本女子野球連盟が実施する「女子野球タウン」の認定を受けました。この認定を契機として、女子硬式野球部のある県立佐伯高等学校の魅力化、女子野球の推進を通じて、地域の活性化、そして「女性が活躍できるまち はつかいち」としての認知度向上につながる取組を進めてまいります。
今年の夏には、新型コロナウイルス感染症の影響で延期となった東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される予定です。本市では、オリンピック競技大会のアジア大陸選考対象大会、パラリンピック競技大会の選考対象大会となる「ASTCアジアトライアスロン選手権」を、4月24日、25日の2日間で開催する予定です。廿日市市に再び多くの感動を与えてくれるものと信じています。本大会が安全に運営されるよう、新型コロナウイルス感染症の感染状況を注視しながら、対策に万全を期してまいります。
また、昨年12月、国において、令和3年度から5年をかけて、小学校の少人数学級を段階的に拡充し、令和7年度には全学年で1学級の上限人数を35人に引き下げる方針が示されました。本市においても、国の方針を踏まえ、少人数によるきめ細かな指導体制の計画的な整備に向けて取り組んでまいります。
【平和への取組】
平和への取組についてです。
昨年は戦後75年、また、核兵器不拡散条約(NPT)発効から50年の節目に当る年でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、広島、長崎の式典は規模の縮小を余儀なくされ、そして5年に1度開催される核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議は延期となりました。
節目の年としては残念な状況となりましたが、一方で、10月には、核兵器の開発、保有、使用を禁じる核兵器禁止条約の批准国が50か国に到達し、先月22日に同条約が発効しました。
「核兵器のない世界」を実現させるためには、条約の署名・批准国の一層の拡大により、この条約を実効性の高いものとしていくことが不可欠です。
核兵器廃絶への新たな一歩を踏み出した矢先、これに反するかのように、条約の発効直前に、アメリカ合衆国が昨年11月に臨界前核実験を実施していたことが明らかになり、市議会議長と連名で速やかに抗議文を送付しました。引き続き、本市が加盟する平和首長会議の加盟都市とともに、平和の希求を世界に広げてまいります。
1 市政を取り巻く諸情勢
市政を取り巻く諸情勢でございます。
【経済・雇用情勢】
はじめに、経済情勢でございます。
「内閣府の政府経済見通し」では、我が国の経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあります。持ち直しの動きがみられるものの、経済の水準はコロナ前を下回った状態にとどまり、回復は未だ途上にあるとされています。先行きについては、デジタル社会の実現に向けた政策を始めとする国の総合経済対策により、令和3年度中には経済水準がコロナ前の水準に回帰することが見込まれるものの、感染症が国内外の経済を下振れさせるリスクに十分留意する必要があるとしています。
そうした中、国においては、顕在化したデジタル化の遅れに対応するため、今年9月に「デジタル庁」を発足させようとしています。コロナ禍を契機に、人々のライフスタイルや価値観は大きく変化しています。社会経済情勢の動向を見極めながら、時代の変化やニーズに対応した市民サービスの提供に努めてまいります。
次に、雇用情勢でございます。
広島労働局の発表によると県内の雇用情勢は、求人が減少する一方で、求職者が増加する傾向にあります。令和2年12月の有効求人倍率は、一昨年同月と比較し0.79ポイント減の1.17倍、正社員有効求人倍率は、0.45ポイント減の1.02倍で、新型コロナウイルス感染症が雇用に影響を及ぼしており、今後も厳しい雇用情勢が続くと思われます。
【財政状況】
国が昨年12月に公表した令和3年度の地方財政計画では、「経済財政運営と改革の基本方針2020」で示された「新 経済・財政再生計画」を踏まえ、地方の安定的な財政運営に必要となる地方交付税等の一般財源総額は、交付団体ベースで令和2年度を0.2兆円上回る62兆円を確保したとしていますが、これら総額の確保に当たっては、昨年度を上回る臨時財政対策債の発行額の増加で補填されており、地方自治体を取り巻く財政環境は、依然として厳しい状況にあると考えています。
引き続き、有利な財源や自主財源の確保などに努めるとともに、効果を可視化した上で事務事業の見直しを図ることや、市有財産の適正管理と有効活用など、効率的かつ効果的な行財政運営を推進し、令和3年度からスタートする第6次廿日市市総合計画後期基本計画の着実な実行と将来の行政需要に的確に対応できる財政基盤を構築してまいります。
【脱炭素社会】
国は、2050年の温室効果ガスの排出量実質ゼロに向け、自動車、蓄電池、住宅やライフスタイルなどの14分野を重点としたグリーン成長戦略を昨年12月に発表しています。今後、地方自治体においても国の戦略に連動した、脱炭素社会の実現に向けた取組が必要になるものと考えています。
【地方創生】
地方創生についてです。
国は、「まち・ひと・しごと創生基本方針2020」において、新型コロナウイルス感染症により、地域の経済・生活への影響やデジタル化の遅れなどが顕在化していることに対し、雇用の維持と事業の継続、経済活動の回復を図るとともに、デジタルトランスフォーメーションを推進しつつ、東京圏への一極集中、人口減少・少子高齢化という大きな課題に対する取組を強化するとしています。
特に、少子化の進行、人口減少は深刻さを増しており、我が国の出生数は、「86万人ショック」と国が表現した一昨年の86万5千人から、昨年はさらに2万人程度減少することが見込まれており、新型コロナウイルス感染症の影響が大きく反映される今年は、出生数の更なる落ち込みが懸念されています。
本市においても、現在、策定を進めている「第2期廿日市市まち・ひと・しごと創生総合戦略」において、新たな経済循環の創出や高い土地需要に対応するための事業用地の確保、子どもを安心して産み育てやすい環境づくり、地域性に応じたまちづくりを始め、デジタルトランスフォーメーションの実現に向けたデジタル技術の活用などにより、「まち・ひと・しごとの好循環」を創出し、人口減少社会の克服と地域経済の活性化を図ってまいります。
2 令和3年度の市政運営の基本的考え方
市政運営の基本的考え方でございます。
【持続可能な行政経営の推進】
コロナ禍への対応を始め、人口減少、少子化、超高齢社会の更なる進展に対し、将来にわたって持続可能な地域社会を構築し、次世代に夢と希望が持てるまちづくりを進めてまいります。
新型コロナウイルス感染症の影響により、市税収入の継続的減収が避けられない状況の中、まちづくりを実効性あるものとしていくためには、徹底した行財政改革が不可欠です。
このため、施策・事業の選択と集中や効率的・効果的な執行に向け導入する、行政評価制度の試行運用を開始するとともに、まちづくりを安定的に支える中期財政運営方針により、自律的な行政経営に向けた取組を推進してまいります。
また、令和3年度に指定期間が満了する吉和魅惑の里、スパ羅漢を含め、観光交流施設全体の効率的・効果的な運営手法について調査を行い、今後の施設全体の在り方を再整理します。
【感染拡大防止と経済活動の両立】
国は、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を踏まえ、切れ目のない財政政策を実行するため、令和2年度第3次補正予算と令和3年度当初予算を一体的に連動させた、いわゆる「15か月予算」を編成しています。
こうした国の動きを踏まえ、本市においても、令和3年3月補正予算案と令和3年度当初予算案を一体的なものとして編成し、未だ収束が見えない新型コロナウイルス感染症に対し、情勢の変化に迅速かつ的確に対応しつつ、感染症対策と社会経済活動の両立を図ってまいります。
補正予算による対応では、3月以降の段階的な実施に向けた新型コロナウイルス感染症のワクチン接種体制の確保を始め、コロナ禍により停滞する市内経済の循環を促し、市内事業者の事業継続と新しい生活様式への適応を支援するため、市と市内産業経済団体等が連携し、「オールはつかいち」で各種事業に取り組んでまいります。また、妊産婦の経済的・精神的負担の軽減を図るための妊産婦特別応援金の給付や、市民、地域自治組織などがまちづくり活動や生涯学習の拠点として利用している市民センター、市民活動センターへのICTを活用したネットワーク環境の整備など、数多くの新型コロナウイルス感染症対策経費を編成しています。
【3大プロジェクト】
次に、本市の将来の発展を牽引する3大プロジェクトについてです。
新機能都市開発事業については、平良丘陵開発土地区画整理準備会を引き続き支援し、地権者との合意形成に努めるとともに関係機関との協議を進め、令和4年度の組合設立を目指し取り組んでまいります。
地域医療拠点等整備事業については、医療・保健・福祉の一体的なサービス提供を始め、まちづくり機能を有する交流拠点である官民複合施設について、令和3年度の完成を目指し、整備を推進してまいります。
宮島口地区整備事業については、昨年オープンした宮島口旅客ターミナルを核に、交通の円滑化や良好な景観形成、観光・交流施設としての賑わいの創出など、地区全体のまちづくりを総合的に推進するとともに、様々な関係者が連携したエリアマネジメントの取組を進めてまいります。
【中山間地域振興】
中山間地域の振興についてです。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機として、テレワークやワーケーションといった、時間や場所にとらわれない新たな働き方が広がっています。レジャーの分野においても、密を避けて楽しむことができるアウトドア志向が高まり、都市部から中山間地域への人の流れが生まれています。こうした情勢の変化は、人口減少に苦しむ中山間地域にとっての好機であり、この機を逃すことなく、移住・定住人口の増加、交流人口の拡大及び関係人口の創出に取り組んでまいります。
また、地域住民の主体的な地域づくり活動への伴走支援に取り組むことにより、地域力の維持・向上を図り、誰もが安心して暮らし続けられる地域づくりを進めます。
佐伯地域においては、昨年3月に大型複合遊具を整備した佐伯総合スポーツ公園に訪れる多くのファミリー層をメインターゲットとして、佐伯地域内はもとより、吉和地域を含む中山間地域全体への回遊促進に向けた取組を推進してまいります。
また、地区内外の交流の創出、住民の生きがいづくりや生活サービスの場を確保するため、旧玖島小学校を活用した交流拠点施設の整備を行うとともに、移住のきっかけとなるお試し住宅の提供に向け、浅原地区にある市営住宅の空き室リノベーションに地域と連携しながら取り組みます。
さらに、県立佐伯高等学校の魅力化として、学力の向上を目指した公営塾の運営や、佐伯高等学校が取り組む地域に根ざした教育活動や特色ある部活動の充実・強化などを地域と連携して支援することにより、本市の未来を担う人材の育成を図ります。
吉和地域においては、小さな拠点の形成に向け、行政サービスを始め、まちづくり活動や地域内外の交流の場など、多様な機能を持つ吉和支所複合施設の整備を推進していくとともに、地域運営組織設立の取組に対する支援を行ってまいります。
また、地域力の維持に向け、引き続き、サテライトオフィスの誘致などを積極的に進めてまいります。
【宮島まちづくり】
宮島地域においては、新型コロナウイルス感染症の影響により、昨年の来島者数が一昨年と比較し、50%以上も減少し、約220万人にとどまりました。一方で、コロナ禍という未曽有の事態においても200万人を超える来島者があることに宮島のポテンシャルの大きさを改めて感じています。
国内外からの観光客が見込めない中、市が実施した市内宿泊キャンペーンや国のGoToキャンペーンなどにより、来島者数は一時期回復傾向にありましたが、感染症の第3波により、急速な感染拡大が生じ、国のキャンペーンも一時停止されるなどしたため、再び、観光客が減少し始めています。感染症収束の見通しは不透明であり、当分の間は、厳しい状況が続くと予測されます。
そうした中、本年4月には、旧宮島支所の跡地に住民の生涯学習及びまちづくり活動を始め、市内外の方々との交流・ふれあいの拠点となる「宮島まちづくり交流センター」を供用開始します。
また、昨年3月に策定した「宮島まちづくり基本構想」に基づき、宮島を次世代に引き継いでいくための各種取組を推進してまいります。
宮島への多くの来訪者によって発生・増幅する行政需要に、安定的・継続的に対応するために必要な財源確保策として、宮島訪問税の導入に向けた準備を進めてまいります。導入時期については、新型コロナウイルス感染症の収束状況や、宮島への来島者の回復状況などから総合的に判断してまいります。
3 令和3年度総合計画体系別主要事業
次に、令和3年度の主要事業でございます。
第6次総合計画に掲げる将来像を実現するための4つの方向性に基づき、施策体系に沿って、主な取組をご説明いたします。
方向性1 くらしを守る
方向性1「くらしを守る」でございます。
健康でいきいきと生活できるまちをつくる(重点施策1-1)
重点施策1「健康でいきいきと生活できるまちをつくる」でございます。
後期高齢者の増加が見込まれる中、フレイル(虚弱)を予防し、健康寿命を延伸することを目指して、高齢者の保健事業と介護予防を一体的に実施します。医療・健診・介護のデータを活用した健康課題分析を基に、地域に応じた低栄養防止、生活習慣病等の重症化予防の取組や、通いの場・高齢者サロンでの健康教育、相談などを行います。令和3年度には、吉和地域で先行的に実施し、令和4年度以降、段階的に全域に拡大してまいります。
移動しやすく便利なまちをつくる(重点施策1-2)
重点施策2「移動しやすく便利なまちをつくる」でございます。
誰もが安全・便利に移動できるよう、自主運行バスの車両更新に併せ、バリアフリーに配慮した低床型の車両を導入するほか、乗り継ぎ拠点における待合所の整備を行うとともに、引き続き、民間バス路線に対する運行補助を行ってまいります。また、中山間地域と沿岸地域の一体化を強化するため、津田から市役所までの運賃を400円とする上限運賃制などを令和3年10月導入に向け進めてまいります。
地域との連携による効率的な公共交通空白地域の移動手段の確保として、吉和デマンドバスの運行を地域のNPO法人に移管し、運行に対する支援を行ってまいります。
道路ネットワークの機能強化として、都市間を結ぶ幹線道路である臨港道路廿日市草津線の整備促進を図るとともに、街路畑口寺田線4工区の完工、供用を開始します。
また、地域間を結ぶ林道玖島川末線や幹線道路を補完する熊ヶ浦鯛ノ原線、堂垣内広池山線等の整備を推進します。
さらに、大野地域と大竹市を結ぶ道路として、鳴川3号線の整備に向けた取組を進めてまいります。
拠点地区の整備として、商工会と市の相互連携による大野支所敷地内への賑わい施設の整備を令和4年4月のオープンを目指して推進するとともに、筏津地区の公共施設再編事業について、令和5年春の供用開始に向け、整備工事に着手します。
また、近年の土地利用動向などを踏まえつつ、賑わいのある市街地形成と土地の持つ付加価値をさらに高めるため、用途地域の適切かつ効果的な見直しを行ってまいります。
安全で安心なまちをつくる(重点施策1-3)
重点施策3「安全で安心なまちをつくる」でございます。
災害の発生に備えた社会基盤の整備として、引き続き、急傾斜地の崩壊対策や河川の護岸改修、しゅんせつを行います。
土砂、洪水、高潮、津波などの災害の恐れがある区域に居住する市民を把握し、迅速な避難行動に結びつけるため、統合型地理情報システム(GIS)の機能を強化するとともに、避難誘導アプリを導入し、市民や市内への通勤・通学者、観光客などの避難行動を支援します。
また、市街化区域内の災害リスクの高い区域における都市的土地利用の抑制に向け、広島県と連携し、都市計画区域区分の変更に係る検討を進めてまいります。
本市の防災重点ため池を対象に、決壊時の浸水や土砂災害の想定及び避難所等を掲載したハザードマップを作成してまいります。
消防庁舎再整備基本構想に基づき、施設の老朽化や狭あい化等の課題を抱えている佐伯消防署の消防・防災拠点施設としての機能強化を図るため、建替えに向けた基本設計に着手します。
消費者の安全を確保するため、引き続き、消費生活センターによる相談、苦情処理のための助言やあっせん、情報提供を行うとともに、関係機関と連携した情報発信、啓発活動により、被害の未然防止に努めてまいります。
いつまでも住み続けられるまちをつくる(重点施策1-4)
重点施策4「いつまでも住み続けられるまちをつくる」でございます。
地域共生社会の実現に向け、分野、世代、内容にかかわらず、包括的に相談を受け止める体制構築のほか、社会とのつながりづくりや参加の支援、地域づくりのコーディネートを一体的に行い、さまざまな課題を抱えた人や世帯を重層的に支援する仕組みを構築します。
また、総合健康福祉センター内に、福祉保健部門や既存の相談支援機関を移転・集約し、全市的な福祉ネットワークの核となる相談支援拠点を整備してまいります。
人権教育や啓発、地域福祉等を推進するため、現在のふれあいプラザを新佐方会館とするリニューアル事業に着手します。
グローバル化の更なる進展を始め、近年の外国人観光客や在住外国人労働者など、本市と関わりをもつ外国人の大幅な増加により多様化する共生社会へ対応するため、「国際化・多文化共生推進指針」の策定に着手します。
豊かな自然を次世代につなぐ(重点施策1-5)
重点施策5「豊かな自然を次世代につなぐ」でございます。
第2次廿日市市環境基本計画に基づき、市内に事業所を有する中小企業者などが行う、二酸化炭素排出量の削減に寄与する設備の導入の取組を支援してまいります。
また、循環型社会の形成に向け、令和3年度から2か年で、第3次一般廃棄物処理基本計画を策定してまいります。
方向性2 人を育む
方向性2「人を育む」でございます。
子どもたちがたくましく自立し確かな学力を身につける(重点施策2-1)
重点施策1「子どもたちがたくましく自立し確かな学力を身につける」でございます。
児童生徒が高度情報通信社会に対応できるよう、授業等で情報通信機器を活用できる環境を整備するとともに、情報活用能力の育成を図ってまいります。
不登校児童生徒の教育支援体制、生徒指導体制、教育相談体制の充実を図るとともに、発達障害等のある児童生徒の社会的自立を目指し、特別支援教育の充実を図ってまいります。
郷土の歴史・文化を次世代につなぐ(重点施策2-2)
重点施策2「郷土の歴史・文化を次世代につなぐ」でございます。
先人の知恵や郷土を題材とした体験的な活動などを通して、課題を見いだし、協働での探究活動に取り組む姿勢を学ぶとともに、ふるさと廿日市への愛着や誇りを育むため、ふるさと学習を行います。
本市の未指定文化財を含め、文化財の保存と活用に関する総合的なアクションプランを令和3年度から2か年で作成し、計画的に事業を推進してまいります。
宮島地域の歴史的町並みや景観を保存・復元・継承するため、伝統的建造物群保存地区内の建造物への補助を行うとともに、年内の重要伝統的建造物群保存地区選定に向け、取り組みます。
未来を担う人づくり(重点施策2-3)
重点施策3「未来を担う人づくり」でございます。
産後うつを予防するため、メンタル不調等を早期に発見し産後ケアサービス等適切な支援が行えるよう、新たに産後2週間健診費用について助成します。
すべての子育て家庭に切れ目のない支援を行っていくため、はつかいち版ネウボラの確立に向けた取組を推進してまいります。
利用者が増加している児童会への対応として、佐方児童会の専用施設を新設するとともに、民間が運営する児童会への支援を行います。
コミュニティ・スクールの推進により、地域全体で子どもたちの豊かな成長を支える「地域とともにある学校」を目指すとともに、「学校を核とした地域づくり」を通して地域の活性化を図ってまいります。
方向性3 資源を生かす
方向性3「資源を生かす」でございます。
ライフステージに応じた支援をする(重点施策3-1)
重点施策1「ライフステージに応じた支援をする」でございます。
セミナーや情報交換会などの開催により、家庭、地域、学校、働く場などのあらゆる場面で男女共同参画を推進してまいります。
地域のまちづくり活動を支える環境をつくる(重点施策3-2)
重点施策2「地域のまちづくり活動を支える環境をつくる」でございます。
地域自治組織が行う、「地域力の維持・持続」や「地域における新たな活力創出」に向けた活動に対する新たな支援制度を創設するとともに、持続可能なまちづくりを目指し、地域との協働による地域経営の仕組みづくりに取り組みます。
市民センターを誰もが安心して快適に利用できるよう、宮園市民センターへエレベーターを設置するとともに、トイレの洋式化などの改修工事を行ってまいります。
地域資源の活用を図る(重点施策3-3)
重点施策3「地域資源の活用を図る」でございます。
農業指導員を増員配置し、農業事業者の経営力向上を支援するとともに、農業団体が行う野菜産地化に向けた取組やブランド化への活動を支援します。
佐伯地域において、七瀬川から農業用に取水している中央水路の今後の活用について検討するための利用実態調査を行います。
有害鳥獣による被害の増加に対応するため、引き続き、捕獲活動や箱わなの購入に対する支援を行うとともに、令和2年度から実施しているモデル事業へICTを導入し、より効果的・効率的な捕獲方法を検証してまいります。また、捕獲後の有害鳥獣の資源化の可能性を検討するための調査を行います。
民有林の整備を目的とした境界の明確化や集積計画の作成に取り組むとともに、人工林及び里山林の整備や森林ボランティア団体等への支援を行い、森林整備の促進と森林の持つ公益的機能の保持を図ります。
野焼き方式で処理されているカキ筏で使われた廃竹について、環境に配慮した処理が行えるよう、その方策について、引き続き、検討してまいります。
内水面の水産資源の回復を図るため、中山間地域の河川における放流アユの定着調査を行い、種苗放流の効果を検証してまいります。
けん玉発祥100周年を迎えるに当たり、関係者や団体、地域とともにけん玉の更なる普及につながる記念事業を実施し、けん玉を生かしたまちづくりを推進してまいります。
観光ブランド力の向上を図る(重点施策3-4)
重点施策4「観光ブランド力の向上を図る」でございます。
近隣都市圏から中山間地域へ繰り返し訪問してもらえるよう、既存観光資源の魅力の発信とマイクロツーリズムを推進し、車移動が難しいアクティブシニアも楽しめるバス路線を活用した旅を紹介します。
宮島水族館では、「いやし」をもたらす美の観賞空間をコンセプトとする新展示施設を含めた更なる魅力発信と誘客強化のため、メディアプロモーションの重点実施と、修学旅行を始めとする団体の集客に取り組みます。
方向性4 新たな可能性に挑む
方向性4「新たな可能性に挑む」でございます。
はつかいちの新たな魅力を創造する(重点施策4-1)
重点施策1「はつかいちの新たな魅力を創造する」でございます。
本市経済の発展を支える産業インフラの整備として、土地需要への対応や企業の誘致を推進するため、新たな事業用地の確保に向け、調査・検討を進めます。
渋滞の著しい国道2号宮島口周辺を対象に、通過交通の広島岩国道路への利用転換を図るため、交通量推計や転換方法、また、効果や影響などについて調査・検討を行います。
また、本市の歴史や文化、産業を学ぶとともに、人との交流を楽しむことで、本市への愛着や誇りを育み、認知度や好感度の向上を図る「廿学」など、転出抑制に対する取組に注力してまいります。
例年12月に申し込みが集中するふるさと納税について、年間を通して本市の魅力を享受していただくとともに、市内の事業者が計画的に返礼品を製造・出荷できる仕組みを構築してまいります。
市民が主役!チャレンジを応援する(重点施策4-2)
重点施策2「市民が主役!チャレンジを応援する」でございます。
本市の事業者の約9割を占める中小・小規模事業者は、商品のブランド化や販売戦略などの新たな事業展開に必要なマーケティングを個々に行うことが難しいため、これを支援するために必要な機能と組織について調査・検討を行います。
また、将来にわたり持続可能な観光地経営を行っていくために必要な組織の有効性について、調査・検討を進めます。
女子野球の普及促進を図るため、マドンナジャパンによる野球教室を開催するとともに、女性が利用しやすい施設環境の整備として、佐伯総合スポーツ公園野球場のトイレを改修します。
幼児を対象としたキッズチャレンジスポーツの開催により、子どもたちに体を動かす楽しみを知ってもらうとともに、スポーツ推進委員の指導力養成の充実を図るなど、本市のスポーツ力向上に取り組みます。
4 予算編成について
令和3年度の予算編成でございます。
以上、述べました方針と、戦略的な取組への重点配分を考慮しながら予算編成した結果、令和3年度一般会計当初予算案の総額は、507億5,000万円、また、特別会計の当初予算案の総額は、8会計で、249億1,259万1千円、企業会計の当初予算案の総額は、3会計で、134億8,082万9千円となりました。
終わりに
新型コロナウイルス感染症は、世界中の人々に衝撃と恐怖を与え、私たちの価値観にも大きな変化をもたらしています。「新たな日常」の実現が叫ばれる中、普段の暮らしぶりや行動様式、働き方など、当たり前と思っていたことが、当たり前のことではなくなっています。
私は、こうした未だかつて経験したことのない難局に、不退転の覚悟で臨んでいく所存です。予測困難な時代の中でも、将来の廿日市市の発展に向けたまちづくりの歩みを緩めるわけにはいきません。
新型コロナウイルス感染症は、我々に多くの気付きを与えました。未来を想像し、失敗を恐れないチャレンジです。私が先頭に立って、「変革に挑戦」し続ける市政運営に取り組んでまいります。
そして、私が掲げる「次世代に豊かなはつかいちを引き継いでいく」という責務を遂行するため、職員と一丸となり、これまで以上に想像力を働かせ、知恵を絞り、スピード感、やり抜く力、妥協しない決意を以て臨みます。
終わりに、市政の遂行に当たり、市議会議員各位、並びに市民の皆様の格別なる御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げまして、施政方針とさせていただきます。