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議会広報「さくら」第65号 新年度予算
どうなる?! 納めた税金の使い方
令和2年度予算案は、3月定例会初日の本会議に提案され、議長を除く全議員で構成する予算特別委員会に審査を付託しました。
世界中で感染が広がる新型コロナウイルスの影響もあり、本会議の延会や会期日程の変更などもありました。
5日間における審査の結果、一般会計予算に、「家庭系燃えるごみの有料化に伴う資源回収推進報奨金の増額分を削減する修正案」が出されましたが、修正案は賛成少数により否決し、反対討論のあった一般会計と後期高齢者医療特別会計は原案どおり可決しました。
また、本会議最終日の審査結果報告後に、一般会計と後期高齢者医療特別会計に反対討論がありましたが、いずれも賛成多数により可決しました。
予算規模は3年連続で500億超に
令和2年度一般会計予算は530億円となり、2年連続で減少となったものの、3年連続で500億を超える予算規模となりました。
これは、会計年度任用職員制度などの導入により人件費が増大したことや、幼児教育・保育の無償化などに伴う扶助費の増加のほか、最終年度となる合併建設計画に伴う建設事業の実施などの歳出増が要因です。
歳入では微増ながらも市税収入を5年連続で160億円台と見込むが、基金残高の減少や市債総額の増加も4年連続となりました。これは、合併建設計画の推進や、ごみ処理施設などの大型事業の実施が主な要因ですが、今年度策定される、第6次総合計画後期基本計画、中期財政運営方針との整合が重要となります。
新市長による初の予算編成
新市長初の予算編成は、地方公営企業法に基づき、簡易水道と水道が統合され、公共・小規模・農業集落排水の3下水事業会計を統合して企業会計に移行するなど、予算体制も大きく変わりました。
また、前市長時代の事業継承である「【※】3大プロジェクト」と呼ばれる大型事業を始め、多くの事業を継続していますが、公約である中山間地の振興や、こども医療費の拡充など、新市長の意思も多く盛り込まれた予算となりました。
- 用語説明
【※】3大プロジェクト:事業規模の大きさから筏津地区公共施設再編事業を加えて4大と表現していたが、現在は新機能都市開発、地域医療拠点等整備、宮島口地区整備の3大事業を示す。
一般会計予算
530.0億円
前年度比:25.3億円減少 4.6パーセント減少
全会計予算総額
922.6億円
前年度比:3.2億円増加 0.3パーセント増加
会計別予算状況
区分 | 令和2年度 | 前年比 |
---|---|---|
一般会計 | 530億円 | 4.6パーセント減少 |
特別会計 | ||
国民健康保険 | 118億7666.5万円 | 3.2パーセント減少 |
介護保険 | 104億3619.3万円 | 0.6パーセント増加 |
後期高齢者医療 | 17億4469.6万円 | 6.1パーセント増加 |
漁港管理 | 1872.0万円 | 0.6パーセント減少 |
公共下水道事業 | ― | 皆減 |
小規模下水道事業 | ― | 皆減 |
墓地管理事業 | 4096.5万円 | 3.9パーセント減少 |
簡易水道事業 | ― | 皆減 |
農業集落排水事業 | ― | 皆減 |
港湾管理事業 | 1億867.7万円 | 197.0パーセント増加 |
市営住宅事業 | 2億4657.2万円 | 6.4パーセント減少 |
宮島水族館事業 | 16億8391.8万円 | 90.2パーセント増加 |
小計 | 261億5640.6万円 | 19.8パーセント減少 |
企業会計 | ||
水道事業 | 40億6703.4万円 | 8.6パーセント増加 |
下水道事業 | 89億6896.5万円 | 皆増 |
国民宿舎事業 | 6799.4万円 | 23.6パーセント増加 |
小計 | 131億399.3万円 | 244.8パーセント増加 |
予算総額 | 922億6039.9万円 | 0.30パーセント増加 |
新機能都市開発推進事業
【事業費】4337万8千円
【内容】令和3年秋に設立が予定されている土地区画整理組合の設立準備の一環として、景観形成検討支援や道路予備設計などを行います。
宮島口地区整備事業
【事業費】10億9790万5千円
【内容】宮島口地区の車両交通を円滑にするため、県との連携により広電宮島口駅の移設をしたうえで、臨港道路・市道の整備などを行います。
地域医療拠点等整備事業
【事業費】6億9527万2千円
【内容】良好な居住市街地の形成を促進する官民複合施設の整備を行うため、市が所有する既存の店舗や駐車場の解体工事を行うとともに、病院新棟整備に関し支援を行います。
河川維持管理事業
【事業費】2億2166万3千円
【内容】集中豪雨や台風による河川反乱および浸水を防ぐため、計画的に普通河川等の浚渫、改修を行います。また、御手洗川などの二級河川の浚渫は、二級河川維持管理事業で行います。
水族館整備事業〈宮島水族館事業特別会計〉
【事業費】8億1743万8千円
【内容】敷地内に新たな展示施設を整備し、映像や光を活用した「SNS映え」する展示により、新たな魅力を発信し、小型のオットセイ2頭を導入します。
農地保全対策事業
【事業費】830万円
【内容】耕作放棄地の再生や農業経営の効率化を図る人に対し、農地改良費の一部を補助します。また、ICT技術を活用した、農地管理や経営管理の効率化を検証します。
中山間地域振興事業
【事業費】7100万2千円
【内容】誰もが中山間地域で安心して暮らし続けられるよう、まちづくり活動団体や地域の事業者と連携して、地域力の維持・向上に取り組みます。
・佐伯高校の魅力化支援など
防災一般事業
【事業費】118万8千円
【内容】陸上からのアプローチが困難な現場において、俯瞰(ふかん)的な視点から被害情報を収集するため、無人航空機(ドローン)を配備します。
筏津地区公共施設再編事業
【事業費】2億3840万1千円
【内容】既存の市民センター機能、体育館機能および図書館機能に、子育てや子どもたちの活動を支援・応援する機能を加えた複合施設を整備します。
(上記事業は令和2年度当初予算案の概要より抜粋)
予算委員会での主な質疑
多くの質疑が行われましたが、その一部を紹介します。
歳入
質問 時間外勤務の実態と見込みは。
答弁 令和2年1月までの実績では、選挙や水防などの特別な事務を除き、1人当たり月平均14.8時間と昨年度より0.9時間増加した。個人別では、月に45~80時間までの者が47人、80時間を超えた者が1人いるが、100時間を超えた者はいない。縮減の取り組みを強力に進めるため、時間外勤務手当の令和2年度当初予算は、前年度比マイナス5パーセントとしている。
歳出
質問 本庁舎改修計画策定業務委託の目的と改修計画の内容は。
答弁 令和4年度に予定する福祉保健部のあいプラザへの移転に併せ、市民サービスの観点に立った窓口の再配置と、老朽化した本庁舎設備を計画的に改修するための調査を行い、市役所機能全体の向上を図りたい。また、照明のLED化、空調や特定天井の改修、トイレの洋式化、エレベーターの更新なども考えている。
質問 土地利用検討計画図作成業務委託とはどのような内容なのか。
答弁 本市へ投資の意向を有する企業が多いことが判明しており、需要を満たす受皿がどれだけあるのか、市域全体を対象に土地利用の検討を行う。また、民間の開発事業者が実際に参画可能かを判断するため、企業の立地可能性を把握する市場調査を行うとともに収支の確認も行いたい。
質問 循環型社会推進事業の紙おむつは従来の白い袋で出せるが、世帯が特定されるのではないか。
答弁 紙おむつを使うすべての方が利用できるようにした。確かに近所に知られたくないとの意見もある。負担はかかるが、黄色いごみ袋で出すことも可能であるので、状況を見ながら考えていく。
質問 内水面漁場環境調査業務委託料とはどんなことをするのか。
答弁 近年、玖島川や小瀬川で放流鮎の漁場への定着が低下傾向にあるため環境調査を行う。具体的には、木野川、玖島川および吉和川において、水質の調査、餌となる付着藻類の河床現況調査、放流鮎の確認をするための潜水調査など総合的に考えていきたい。
質問 救急救命士養成課程研修負担金が大幅に増加している理由と状況は。
答弁 令和元年度は1名の養成であったが、次年度は2名を予定しているため負担金が倍増した。第6次総合計画の前期基本計画では、すべての救急車へ救急救命士を搭乗させるという目標を掲げており、達成には40名の配置が必要となる。現在38名を現場に配属していることから、残り2名を養成し搭乗率100パーセントを目指す。今後、有資格者の減少が見込まれるため継続して養成に努めたい。
総合的かつ柔軟な対応で不登校対策を進める
質問 不登校総合対策事業の複数事業を統合した理由と目的は。
答弁 これまでの不登校対策は、総合的にさまざまな方面から支援して成果を上げるという点が非常に弱かったため、不登校に関わる支援を一つの事業に統合し、同じ目標をもって取り組むこととした。また、これまで別々の仕事をしていた職員を、子どもつながり支援員に統合し、職種ごとに区切られていた仕事の垣根を越え、目の前で起こったことに即時に柔軟に対応することを期待している。
国民健康保険特別会計
質問 特定健康診査の受診率向上対策は。
答弁 令和元年度に開始した集団検診ウェブ予約システムを引き続き行うとともに、新年度からは新たにAI活用で、過去の受診時の質問票やレセプトデータから被保険者の心理特性に合わせ、タイプ別メッセージで受診勧奨通知を送るなど、効果的に受診率向上を図りたい。
総括質疑
質問 新市長初の予算編成だが、財政健全化への考えは盛り込んでいるか。
答弁 予算編成に当たっては、次世代に政治のツケを回さないまちへの取り組みとして、政策評価や事務事業評価など、行政評価に取り組むこととしている。事業全体をやめる、廃止するには至っていないが、規模の縮小や効率的な事務処理などで、財政調整基金の繰入額を9.8億円とした。限られた財源をいかにして市民益を最大にできるかという観点で予算編成を行った。