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まち活事例3『こどもがつくるまち』

ページID:0121462掲載日:2025年5月14日更新印刷ページ表示

​早川 幸江(はやかわ さちえ)さんにインタビュー​

 早川幸江さん

 早川さんは、2013年に廿日市市へ移住し、地域支援員として、佐伯地域の活性化を担ってきました。
 地域支援員の任期中に「こどもがつくるまち」の活動を始め、任期を終えてからもさまざまな地域で「こどもがつくるまち」を開催しています。

「こどもがつくるまち」について教えてください

 「こどもがつくるまち」は、ドイツのミュンヘンで1979年に誕生した教育にまちづくりの要素を取り入れたプログラムです。子どもたちが自ら「まちづくり」や「まちの運営」を疑似体験し、主体性を発揮することで自主性や協調性、創造性を育み、社会の仕組みや社会への参加について学ぶことができます。
 「こどもがつくるまち」の運営メンバーは、小学3年生から中学生までで、当日参加する「こども市民」は幼稚園の年長から中学生までの子どもたちです。

 運営メンバーの子どもたちは、まちの通貨をつくったり、いろいろなお店や銀行、ハローワークの運営に向けて話し合うなど、「こどもがつくるまち」の準備を行い、開催当日は、たくさんの「こども市民」が楽しく過ごせるまちを、子どもたちの力で運営していきます。

こどもがつくるまち

始めたきっかけを教えてください

 私は以前から「地域が輝くお手伝いをしたい。」と思っており、地域支援員に採用されたタイミングで、千葉県浦安市から廿日市市に移住し、それからの約3年間、地域活性化のために活動してきました。
 浦安市で暮らしているときは市民活動センターのスタッフとして勤務しており、そこで多くの「まちづくり活動団体」が立ち上がっていくのを見てきたので、廿日市市でもこういう人たちが出てきたらいいなと思っていました。しかし、地域支援員の仕事を通じて実感したことは「大人はみんな忙しいし、人手も足りないし、時間に余裕がある人は多くない。」ということでした。そこで、「大人だけではなくて、未来を担う子どもたちの育成に取り組もう。」と思うようになりました。


 ある日、浦安市で「こどもがつくるまち」が開催されたことを聞き、私も以前からとても興味がある活動だったので「廿日市市でもやってみたい」と思い、開催に向けて真剣に考えはじめました。開催するには、まず「こどもがつくるまち」を知ってもうことが必要だと感じていたのですが、偶然、浦安市で「こどもがつくるまち」を主催した公民館職員の方が広島に来る予定があると聞いたので、「こどもがつくるまちの話をしてもらえないか」と声をかけたところ、廿日市市でおはなし会をしてもらえることになりました。
 おはなし会当日は、雪が降っていたにも関わらず、40人以上の人たちが会場に集まり、「子どもに関することは、みんなが関心あるんだな。」と実感しました。事例紹介のあとのワールドカフェの場でも「やりたいよね。」、「どこから手をつけたらいいのかな。」という具体的な声が上がるなど、とても好感触でした。


 その後、地域支援員の任期中に、市役所や商工会の方に協力してもらいながら「こども起業塾(みんなを笑顔にするためのお店づくりを体験し、社会の仕組みやビジネスについて学ぶ場)」という取組をはじめ、市民活動センターまつりやさいき水まつりなどでお店を出し、参加した子どもたちも「すごく楽しかった。」、「またやりたい。」と言ってくれました。
 さらに、この活動を聞いた串戸市民センターの方から「こどもがつくるまちの開催に向けた活動を一緒にやりませんか。」というお声がけをいただき、そこでも、こども起業塾を開催し、徐々に、子どもたちや保護者の皆さん、地域の方との中で「今度はこどもがつくるまちにしていきましょう!」という流れで進んでいきました。

始まった時の反応はどうでしたか?

 最初は、串戸市民センターで行われたイベントのブースの一つとして開催し、手伝ってくれる大人スタッフの方からは「実際はどうやって動けばいいの?」、「とりあえず早川さんの言うように動くわね。」という感じで進めていきました。実際に、こどもたちが主体的に動いている姿を見たり、そのサポートなどを通じて、「こどもがつくるまちって、こういうことだったのね!」、「納得できた!」と、みんなで喜び合えたことが懐かしいです。

 その後も、コロナ禍で通常どおりに準備や開催ができないこともありましたが、準備の段階で市民センターが使用できないときには、ゲストハウスの部屋をいくつか借りてオンライン会議をしたり、開催方法をオンラインに変更し、ライブ配信のスケジュールを組んで、「料理教室」や「イラストの描き方講座」などを実演したりもしました。
 当時の市民センター所長さんが「できる範囲でやってみよう。」、「挑戦することで子どもたちの成長がある。」といってくださり、実際にやってみると、こどもたちの充足感は大きく、こどもたちの姿を見て私自身も感動したことを覚えています。


 その後、市が募集していた「民間提案制度」に応募し、「こどもがつくるまち」の取組を市と連携しながらを進めることになりました。準備や当日の実施については、自分たちが主体的に行うのですが、広い会場がある、さいき文化センターでの開催や学校へのチラシ配付、広報紙への開催情報の掲載などについては、市と役割分担しながら進めて行くことができました。そして、結果的に、定員の100人の子どもたちの応募があり、キャンセル待ちが出るほどの反響でした。
 開催に向けた準備を進める中では、当時はまだ、コロナ禍でしたので「今回だけはお弁当にしない?」と子どもたちに伝えたのですが、子どもたちは、「飲食店をやりたい。」、「食べ物がなかったらこどもがつくるまちと言えない。」と言うんです。そこで、「じゃあどうしたら安全に開催できるのか考えよう。」ということで、保健師さんに協力してもらい、感染を防ぐ方法をみんなで勉強しました。テーブルを壁につけて、「しゃべらない」という貼り紙を貼ったり、消毒する係を配置して、食べ終わったらすぐに拭くように計画したり。そのほかにも、「一方向を向いて食べる」、「一人で食べる」など、「ガイドラインに沿って開催しています」と言えるように安全対策を徹底して開催することにしました。

100人のこども市民が参加した「こどもがつくるまち」の様子について教えてください。

 当日、運営メンバーの子どもたちが作り上げた「こどもがつくるまち」に訪れた「こども市民(当日参加のみのこどもたち)」は、まちの住人登録をし、銀行でまちの通貨を受け取ります。そこから、運営メンバーの子どもたちが運営する駄菓子屋さんやお弁当屋さん、パン屋さんなど、10店舗以上のお店で、もらった通貨を使って遊んだり、買い物をしたりしました。また、通貨が足りなくなったら、ハローワークで仕事を探して、お店で働いて通貨を稼ぎ、初めての接客や集客を経験したり、もっと買い物ができるようになったり、いろいろなかたちでまちの時間を楽しみました。
 また、まちには、大人ボランティア以外の大人は入場できないので、子どもたちはまちの一員として、自分たちでしっかりとルールを守りながら、どのように働き、どのように通貨を使っていくのかなど、普段はあまりできない経験を積むことができました。
 実は、「こどもがつくるまち」は、大きな「ごっこ遊び」なんです。ごっこ遊びって、その人のように振る舞うことがとても大事なんです。例えば、まちの市長になった子どもは、私がお願いをしていないのに、ちゃんと制服を着てネクタイを締めていましたし、おしゃれなお店を開いている子どもは、自分が思い描く服装を着てきたり、子どもたちが自ら考えてそれらしくしようというところが面白いし、それによって、その立場の人の気持ちもわかるようになる。これがごっこ遊びの素晴らしいところなんです。

こどもがつくるまち 会議画像

 

開催する時に大切にしていることはありますか?

 

 当日までに、まち会議(運営メンバーの会議)を数回実施しながら準備をしていきます。開催日や時間、場所などの大枠は大人が決めますが、まちのルールや実際の開催方法などは、子どもたちに「どうする?」と聞きながら進めていくようにしています。大事なのは「自己決定」をすることで、自分がどうしたいかを考え、自分で決めたことを最後までやりきったという経験を自信にしてもらいたいと考えています。大人ボランティアは、子どもたちの意思を最大限尊重しながら、運営のサポートをするというスタンスです。

こどもがつくるまち

子どもたちに何を感じて欲しいですか?

 自分たちの生まれ育った場所を大切にしてもらえたら良いなと思っています。自分たちのまちを、自分たちで楽しくしようと考えて欲しいんです。「誰かがやってくれればいい。」じゃなくて、自分たちで(解決まではできないかもだけど)「動く人」になって欲しいんです。「楽しくない」と言っているのではなくて、「自分たちが動けば楽しくなる」ことを肌で感じてもらえたらうれしいです。
 こども市民は、まちのお店などで買い物をするだけではなく、実際に働く経験もできるので、「お金の大切さがわかった」、「働くことが楽しいことがわかった」という感想を多く聞きます。実際、子どもの頃に仕事について教わったり体験することって少ないじゃないですか。それで急に学校の卒業が近づいて「就職?どうするんだ?」みたいな人がとても多いと思うんです。
 「こどもがつくるまち」では、仕事をやりたい子どもたちがハローワークに並んでとても混むんです。「お金が足りなくなっちゃったから。」という理由もあるかもしれませんが、「次はこの店で働いてみたいんだ。」と言って並んで待ってる子どもたちも多いんです。子どもたちのそんな姿を見ると、そもそも人間の根底に「仕事をしたい。」という気持ちあるということを感じることができて、ちょっとうるっときてしまいます。
 大人になると忘れがちですが、「役に立ちたい。」とか、「これをやってみたい。」という憧れを持ちながら仕事を楽しむことが、「こどもがつくるまち」では、すごく大切だと思っています。

活動を支えてくれる人はいますか?

 ずっと一緒に活動している人がいて、その方にはよく相談しながら進めています。そのほかにも、その時々のボランティアさん(学生・一般)にも協力してもらいます。最近は、企業の人も協力してくれるようになり、「当日手伝いに行きますよ」みたいな感じで社員さんを連れてきてくれることもありました。あとは、何よりも「楽しい」と言って、参加してくれる子どもたちに感謝しながら活動をしています。​

今後の活動への思いを教えてください

 運営メンバーをしていた子どもの中から高校生になる子どもが何人か出てきていて、ボランティアスタッフで入ってくれています。「こどもがつくるまち」に参加した子どもたちが成長し、ボランティアとして関り、小さい子どもたちのお世話をするというサイクルができてきているんです。
 私は、「こどもがつくるまち」に関わった子どもたちの中から、地域で活躍する人材が育っていくと思いながら活動をしています。
 これからも、この活動を通して、「地域が輝くお手伝い」を続けていきたいと思っています。

まち活にチャレンジしてみたい方へのメッセージをお願いします

 〜いつからでもキャリアはつくれる  何度でもチャレンジができる  想像もつかなかった世界に  人との出会いが  連れて行ってくれる〜