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まち活事例1『何にもしない合宿』

ページID:0116540掲載日:2025年5月14日更新印刷ページ表示

​寺本 光児(てらもと こうじ)さんにインタビュー​

 寺本光児さん

 中学2年生の頃、当時の宮内公民館に頻繁に遊びに行っていて、職員の方に「なかよし広場(小学生対象の体験活動)」に誘われたことがきっかけで、まちづくり活動に関心を持ち始めました。
 現在は、システムエンジニアや放課後児童クラブの支援員などの仕事をしながら、「みやうち冒険あそび場の会」や「青少年夢プラン実行委員会」の代表として、青少年の育成を中心とした活動を行っています。2024年6月から、新たに「何にもしない合宿」を始めています。

「何にもしない合宿」について教えてください

 「何にもしない合宿」は、静岡県裾野(すその)市で始まりました。夕食を食べて、お風呂も済ませてから、子どもたちが体育館に集合します。そして遊ぶ、寝る。翌朝起きて、ちょっと遊んで帰るだけの合宿です。食事やお風呂のお世話をしないので、運営の負担が少ないんです。負担が少ないので、合宿を定期的に続けられ、そこで人と人が出会うきっかとなります。顔見知りになって仲良くなるから、まちで会ったときに挨拶する関係が生まれます。そんな住みやすいまちをの基盤を作ることを目指した合宿です。

 何にもしない合宿

始めたきっかけを教えてください

 「何にもしない合宿」を考案した静岡県裾野市の小田圭介さんが、岡山県和気町で講演会をするらしいと知って、「行かなきゃ」と思い参加しました。小田さんの講演に雷に打たれたように感動してしまったんです。
 そこで小田さんと仲良くなって、その後実際に、僕は静岡県裾野市に行って、合宿で一泊させてもらったんです。現場の子どもたちの姿とか、夜寝ないで、ずーっと体育館の隅でぺちゃくちゃ喋ってる子どもたちのことを知りつつも容認している人たち。それを気にせず寝られる大人のすごさを目の当たりにしました。それはもう8年とか10年とかやってるからこその信頼できている完成された形です。その形を廿日市市の中にも作りたいなと思ったんです。

開催に向けて、協力してくれた人はいますか?

 裾野市から帰ってきて、「なかよし広場」のメンバーに声をかけたら協力してくれることになりました。宮内地区コミュニティづくり協議会の人たちには、僕が行った視察の写真などを見せながら説明して、「こういうのがあるからやらせて欲しい。」と言って、「なかよし広場」を通じて顔見知りになっていたコミュニティの人たちも「やってみよう。」となりました。
 2019年の12月に開催する予定だったんですが、コロナの波がちょうど来て中止に……。コロナが落ち着くまでの間に、なぜか裾野市の小田さんが廿日市市に来て講演をしてくれることになって、びっくりしましたね。

 講演会をしてもらったら、聞いた人に「何にもしない合宿とは何か」が広がるわけなんです。僕一人が説明するよりも、まちづくりに関わっている人に集中的に知られたので、「この瞬間を逃してはいけない。」と思って、宮内の人たちにもう一回話をして、2024年から始めました。

 「何にもしない合宿」は、人が出会う場作りを継続するということに本当の意味があります。それを理解できないまま、合宿だけやっていても意味がないんです。小田さんの講演を聞いて多くの人が理解してくれて、僕にとってはようやく期が熟した感じでした。

 開催するにあたって、「小学校で泊まれたら最高だよね。」となったので、宮内小学校へ相談に行きました。僕は、その1年くらい前から廿日市警察署管内の少年補導協助員として、学校に出入りしていたので、僕の人となりを、先生や子どもたちが既に理解してくださっていました。また、宮内地区コミュニティづくり協議会の方も「何にもしない合宿をやりたいんだけど、協力して欲しい。」と小学校にかけあってくれたりして、「すごく意義があることだから、やったらいいと思うよ。」と校長先生にもご理解がいただけて、宮内地区で地域と学校が共に作る「何にもしない合宿」を始めることができました。

開催した時の反応はどうでしたか?

 初回は、定員を50人にして、やりやすい規模感でやろうということにしました。宮内小学校の全児童にチラシを配って、その他、地域コミュニティやPTAの方々には情報を流しました。その結果、1年生から6年生まで60人くらいの応募がありました。参加費は、100円として、消耗品を買ったりしました。保険代はコミュニティの費用です。

ピース1  何にもしない合宿
 学校という場所は、普段は「これしなさい、あれしなさい、今はこれをやる時間です。」という決まりが多い場所なんです。この合宿では、それがないのが「すごく楽しい。」と子どもたちは言います。「今日はマット運動をします。」ではなく、マット運動をしてもいいし、バスケをしてもいい、別に何もしなくてもいい。好きにしていいと言われた中で、「自分は何をしたいかな。」と自分で決められること(自己決定)は、とても嬉しいんですよ。

 就寝時は、寝袋とマットで寝ています。持ってくるものに寝袋と書いてあるので、ほとんどの子が寝袋を自分で持ってきます。お腹が空く子は、サンドイッチやおにぎりとか、お菓子じゃないものなら持ってきていいことにしています。お菓子は夜寝る時間帯とかに食べたりするじゃないですか。するとなかなか寝ついてくれないので。寝ない子どもは監視したくなってしまう。それは大人の負担になるので、負担になることはなるべくなくす。だから聞かれたら、「お菓子は持って来てはダメ。」と言います。

テーブル  男子
 終わった後には、「楽しかったことは何ですか。」、「次にやりたいことは何ですか。」ということだけ、子どもたちにアンケートを書いてもらいます。鬼ごっことか、オセロがしたいとかいろいろです。そこに何かを書いてもらい、記憶に定着させることが大事なのかなと思っています。体験を思い出して、「あれが楽しかった!」と書くと記憶が定着する。次に何をやりたいかのか、希望を自分の中で考えて書くことで、次回参加したいという動機になるのかなと思っています。「ああ楽しかった。」で終わっては、ちょっともったいないので。
 合宿は、半分ぐらいはリピーターです。今の目的は、「地域内の人と人の交流の最大化」です。地域内でやらないと意味がないと思っていますので、宮内地区の子どもたちを対象にしています。だからこそ、この合宿が各学校や各地域で生まれていけばいいと思っています。
 小学校でやるのがハードルが高いのであれば集会所でやればいいんです。裾野市は集会所でも小さな合宿をやっています。町内会単位で、その町内会に住んでいる人が参加できる合宿なんです。本当にその地域に住んでいる人たちが顔を合わせる会なんで、絶対面白いと思います。

今後の活動への思いを教えてください

 この活動は、僕が生まれ育った地元が、年を取っても暮らしやすい場所であって欲しいので、今のうちから老後になった僕が、幸せに暮らすためにやっているのかもしれません。今の子どもたちと顔見知りになっておくと、僕が70歳、80歳になっても知り合いがいて、居場所がありますよね。居場所がないところで生きていくのは大変なんですよ。「元気?」と手を振ってくる人や助けてくれる人がいっぱいいる場所を作りたいと思いました。

 僕がこうやって作った状況(場)というのは、僕以外の地元の人たちの間でも関係性を生みます。だからこそ自分のためになることは、人のためにもなると考えています。
 継続することに最大の意味があるので、細く長く続けていくことを大事にしたいです。また、何かあっても場が継続していけるような組織づくりやシステムづくりをしていきたいと思っています。
 この合宿が各地域で開催されていくといいと思っているので、合宿を開催したい地域に出向き、裾野市で体験したことや宮内で実施していることをお伝えするアドバイザー役をして廿日市市内の各地に合宿の種を蒔いていきたい。
 「顔見知りが増えるとどういいのか?」、すぐに直接的な効果が出てくるわけではないです。お店で出会って声を掛け合うくらいはすぐに出てくるかもしれませんが、本質的なアウトプットやアウトカムは数年後や数十年後に出てくるはずです。

 合宿を通して顔見知りが増えている状態は、社会教育における土壌が豊かになっている状態。そこにどんな花が咲くかは土壌を整えるときには分からないが、間違いなく花は咲きやすいし、どんな花を咲かせるかは一人一人が決めたらよい。合宿を通して、さまざまな花(成果)が咲き、実がなり、成果を収穫することができる豊かな土壌を持つ地域にしていきたいです。

まち活にチャレンジしてみたい方へのメッセージをお願いします

 まずは小さなステップでやってみること。やってみることで分かることがたくさんある。興味のあるところにまず飛び込んで、その分野がどういうものなのか、どういう人がどういうことをしてるのかを知ったら、人脈ができたり、そこから何かやりたいことが見つかるかもしれない。それと自分が楽しいと思わないことは始めちゃダメだと思うんです。そっちで疲弊してもしょうがないと思いますので。
 チャレンジしたいことがすでにある人は、できるだけ多くの人にチャレンジしたいことを話すこと。いろんな人と話す中で、プランを修正したりブラッシュアップしたりできる。アドバイスももらえるかもしれないし、批判ももらえるかもしれない。人の反応を見るのはマーケティングの第一歩。夢は語れば語るほど実現に近づいていきます。