アルゼンチンアリの被害
アルゼンチンアリによる被害は多岐にわたり、さまざまな被害が報告されています。
その被害は大きく分けて、「不快害虫としての被害」、「農業害虫としての被害」、「侵略アリとしての生態系への被害」の3つが挙げられます。
1. 不快害虫としての被害
アルゼンチンアリは、人手の入った場所を営巣場所として好む事に加え、他のアリが通ることのできないほどの狭い隙間でも巧みに通り抜ける習性があるため、しばしば屋内に侵入してきます。
屋内に侵入したアルゼンチンアリは、台所などに置いてある食べ物にたかるため、人に対して不快感を与えます。
その他、就寝中に、体の上を這ったり、咬んだりするため、十分に眠れないなどの被害も報告されています。
【アルゼンチンアリの巣の写真】
撮影:アレックス・ワイルド(myrmecos.net)
2. 農業害虫としての被害
アルゼンチンアリは、アブラムシやカイガラムシなどの農業害虫と共生関係(異なる生物が、互いに緊密な関係を保ちながら生活する関係)を持っています。
アブラムシやカイガラムシは、甘い蜜を分泌しており、アルゼンチンアリはこれを非常に好みます。
アルゼンチンアリは、甘い蜜をもらう代わりにアブラムシやカイガラムシを外敵から保護するため、これらの個体数を増加させます。
結果として、アブラムシやカイガラムシによる農作物への被害が、アルゼンチンアリによって助長されていることになります。
ただ、このような共生関係は、アルゼンチンアリに限った話ではなく、他の種類のアリとアブラムシやカイガラムシの間でも見られるようです。
その他、アルゼンチンアリ自身が、果物、柑橘類、トウモロコシなどの農作物へ直接被害を与えることもあります。
【カイガラムシを保護するアルゼンチアンアリ】
撮影:アレックス・ワイルド(myrmecos.net)
3. 侵略アリとしての生態系への被害
アルゼンチンアリは、本来の生息地以外の場所へ侵入・定着し、物資や人の移動に便乗して分布を拡大する放浪アリと呼ばれる種類のアリです。
その中でも、侵入・定着した地域で、在来のアリを攻撃するため、特に侵略アリと呼ばれています。
侵略アリが侵入・定着した地域では、それまで微妙なバランスの上に成り立っていたその地域の生態系がダメージを受けるため、さまざまな生物への影響が心配されます。
アルゼンチンアリの侵入による影響に関しては、世界各国からさまざまな例が報告されています。
フランスのある地方では、在来のアリはすべて一掃され、アメリカのカリフォルニア州では、それまで27種類いた在来のアリのうち16種類が駆逐されています。
アリ以外の生物の例としては、在来のアリを主食とするコーストツノトカゲの個体数が著しく減っている例(アメリカ)や在来のアリに種子散布を依存している植物が他の植物に置き換わっている例(南アフリカ)などが報告されています。
【集団でアカシュウカクアリを攻撃するアルゼンチンアリ】
撮影:アレックス・ワイルド(myrmecos.net)